心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「……中の様子を予想したということか?」
「いえ。聞いておりました」
自分の聞き間違いかと思い、念のため確認したグレイの問いかけに、ガイルがあっさりと答える。
悪びれた様子のないその堂々とした態度に、グレイは一瞬理解が追いつかなかった。
「聞いていた? 部屋の外で、俺とマリアの会話をか?」
「はい」
「廊下にいたら通常の声でも聞こえない上に、俺とマリアの声は小さかった。それでもお前には聞こえていたと?」
「はい」
「…………」
何をふざけたことを言っているんだ、という冷めた目でガイルを見るが、彼の瞳は揺れることなくまっすぐにグレイを見つめている。
なんなんだ、コイツは……。
にわかには信じられないが、これまでの彼の行動を思い出す限り完全に否定はできない。
この男ならありえると思ってしまう。