心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「盗み聞きをしていたということか?」
「申し訳ございません。問題なさそうであればすぐに撤退するつもりだったのですが、問題だらけでしたので」
「なっ……!?」
しれっとした態度で不躾なことを言い放ってくる。
グレイは怒りたい気持ちを我慢して、それ以上に気になるその理由を聞いてみることにした。
「マリアとの会話のどこに問題があったというんだ? 俺はマリアを安心させる言葉しか言っていないぞ」
そう突っかかると、ガイルは眉を下げてひどく残念なものを見る目になった。
なんとも頭にくる顔である。
「なんだ、その顔は? さっきの会話のどこがダメだったのか、説明できないのか?」
「それは、グレイ様が『結婚する』と言った部分でございます」
「は? なんでそれがダメなんだ?」
「マリア様はとても寂しがっておりました」
「だから、『結婚しても邪魔にしない』とちゃんと言っていただろ!? そこを聞いてなかったのか!?」