心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
妊娠させた相手は、エマの妊娠を知るなり逃げてしまっている。
頼れる親もいない、お金もない、酒屋の屋根裏部屋に住まわせてもらっていたエマは、病院にも行かずなんと1人で出産をしたのだ。
タオルにかじりつき、陣痛の痛みによる叫び声も我慢した。
血だらけになった布団の上で、今さっき産まれてきた赤ん坊がかすれた声で泣いている。
あまりの激痛に耐えたエマは、すでに意識を失いそうになっていた。
泣いている我が子に手を差し伸べる気力すらない。
血を出しすぎてしまったのだろうか。
「はぁ……はぁ……」
エマが意識を失いかけた時、赤ん坊の身体が黄金の光に包まれた。
あの光は何……?
そう思った1分後には、エマは身体を起き上がらせて赤ん坊を抱き上げていた。
先ほどまで感じていた痛みも、身体の不調もなにもかもが消えてなくなっている。