心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「ガイルに読めと言われて強制的に渡されたんだ」
「……それで、読んだの?」
先ほどまでは恐々とした態度だったレオが、今は興味津々といった様子で目を輝かせている。
グレイは目を細めてジロッと睨みつけたが、レオは全く怯まない。
俺がこの本を読んだかどうかが、そんなに気になるのか?
「一応、読んでみようとしたが……この皇太子がとにかく気味が悪くて、とてもじゃないが1章すら読んでいられなかった」
「へぇ……。どういうところが気味悪かったの?」
「どういうところがって、やたら瞳が綺麗だの心が綺麗だの言い出したり、とにかく常に女のことばかり考えていて思考回路が全く理解できな……」
「ブフッ!!」
話している途中だというのに、我慢できなくなったレオが思わず吹き出した。
ベッドに倒れ込み、お腹を抱えて大笑いしている。
「あはははは……っ!! グ、グレイが……恋愛小説……プクク……! しかも理解できないって……あは……あはははは!!」
「…………」
ボスボスとベッドを叩きながら爆笑しているレオを見てつられてしまったのか、モリーが顔を背けて肩を大きく震わせた。
手を口元に当てて、絶対に声を出さないようにしている。