心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「わぁ……! やっぱりグレイは正装が似合うね! コートを羽織ると、まるで王子様みたいだよ」

「こんな真っ黒な王子がいるか」


 グレイは上下の服、コート、ブーツ全て黒で揃えている。
 胸元や腰の部分にシルバーのアクセサリーが付いているのと、コートの内側がくすんだ赤色なのを除けば真っ黒である。

 艶のある黒髪は、前髪を少し残し他は後ろへ流しているため端正な顔立ちがハッキリと見える。


「そうなんだけど、なんかダークヒーローって感じ!」

「……悪者じゃねーか」

「悪者じゃないよ! 物語によっては、正統なヒーローよりも人気があったりするんだよ?」

「はいはい」


 レオの軽口を流し、グレイは部屋の扉に向かって歩き出した。
 どこに行くのかと尋ねられて、グレイは少し迷った素振りを見せてからボソッと言った。


「マリアのところだ。もう準備も終わってるだろうからな」

「!! 俺も行く!!」

「そう言うと思ったよ」


 グレイは呆れたようなため息をついて、レオを待たずにスタスタと部屋から出ていく。
< 394 / 765 >

この作品をシェア

pagetop