心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
実はこの2週間、またマリアとろくに会話もできない日々が続いていた。
セレモニーまでの最終チェックで、マリアは毎日レッスンに追われていたのだ。
久しぶりに会うと思うと、グレイの心は妙にざわつき落ち着かない。
不思議な感覚に疑問を感じながら、グレイはマリアの部屋へと向かった。
コンコンコン
「俺だ。入ってもいいか?」
マリアの部屋の扉をノックして声をかけると、中が一瞬ざわっとしたのが聞こえてきた。
マリアの声とメイド達の声がなんとなく聞こえるだけで、何を言っているのかまではわからない。
「ど、どうぞ」
どこか緊張した様子のマリアの声に、グレイとレオは目を合わせた。
レオがコクッと頷いたのを確認して、グレイが扉を開ける。
マリアの部屋には数人のメイドがいたが、マリアの姿がよく見えるように皆壁際に並んでいた。
部屋の真ん中には、少し恥ずかしそうにソワソワしているマリアがこちらを向いて立っている。