心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 目を見張るほど美しい純白のドレス。
 デザイナーのルシアンが子どもらしくふわふわの可愛いデザインにすると息巻いていたはずだが、どうやら変更したようだ。

 純白のドレスには、リボンなど目立つ大きな飾りは付いていない。
 その代わり、ウエストの部分にはシルバーのレースと細かい宝石が飾られていてキラキラと光っている。

 ふわっとしたスカートは、裾に一周白い刺繍が施してある。
 飾ってある部分以外はシンプルになんの飾りも付いていないため、とても上品に見えるドレスだ。

 髪は半分だけ編み上げていて、残りはおろしている。
 プラチナブロンドの長い髪がさらに美しさを際立たせていた。
 

「わぁ……っ! マリア、すっごく綺麗だよ!!」


 レオが歓喜の声を上げる。
 周りにいるメイド達が目を合わせてにっこりと笑い合っているが、エミリーだけはグレイの反応を気にしている様子だ。


「ありがとう、レオ」


 嬉しそうに返事をした後、マリアがチラリとグレイを見た。
 正装したグレイの姿に頬を赤らめている。


「マリア、よく似合ってる」

「あ、ありがとう。お兄様も、その、とっても素敵です……」


 グレイに褒められたマリアは、パッと視線を外すと指をモジモジさせながら言った。
 グレイの隣にいたレオが、小さな声で「えっ? 俺は?」とつぶやいている。

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