心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 ガイルは優しい瞳でマリアをジッと見つめると、にっこり笑ってマリアの視線の位置に合わせるように腰を曲げた。


「マリア様、とってもお綺麗ですね」

「ありがとう。ガイル」

「グレイ様には可愛いと言われましたか?」

「えっ……?」


 マリアの顔がかぁ……っと赤くなった。
 いつも無表情のガイルは、ニコニコと不自然なくらいの笑顔になっている。すかさずにグレイが口を挟んだ。


「何言ってるんだ、ガイル」

「あの、お兄様には、似合ってるって言ってもらったよ」

「左様でございますか。似合ってる……と」


 ガイルは不自然な笑顔を崩すことなく、今度はグレイのほうに顔を向けた。
 いつもとは違う気味の悪いガイルに、グレイは顔をひきつらせる。

 レオは何かを察したのか、ワクワクした表情で黙ってその様子を見守っている。

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