心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「グレイ様。確か数ページであろうとも、あの小説をお読みになりましたよね?」

「え? あ、ああ。それがどうかしたか」


 なぜ全部読んでいないことを知っているんだ、と口から出そうになったのを止める。
 ガイルに全て把握されていることに、グレイは慣れてきていた。
 

「それならば、ドレスアップした女性にかける言葉を学んだはずでは?」


 グレイは自分の耳を疑った。
 信じられないものを見るような目で、ガイルを凝視する。



 今、なんて言った? 学ぶ? ……あの本から?
 


「何を言っているんだ。あの本から学べることなど何もない。気味の悪い男が、ただ気持ちの悪い言葉で女を褒めてばかりの……」

「それです!」

「……は?」


 ガイルの不自然な笑顔が消えて、急にカッと目を見開いた。その迫力にまた気圧されそうになる。


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