心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 部屋の中に待機している騎士が扉を開けると、グレイのように正装した姿のエドワード王子が立っていた。
 グレイのように……といっても、もちろん真っ黒ではなく真っ白の装いだが。

 金髪のサラサラした髪の毛、まだ幼いながら整った顔のエドワード王子は、マリアの姿を見るなり顔を歪めた。

 まるで大嫌いな虫でも見ているのかと言いたくなるような険しい顔だが、頬だけは真っ赤になっている。
 一体なぜこんな顔になっているのかと、この部屋の中でマリアだけがわかっていなかった。



 エドワード様、どうしたんだろう?
 すっごく変な顔してる。マリアの格好、おかしいのかな?
 お兄様はかわいいって言ってくれたのに……。



 不安になりながらも、マリアはその場に立ち上がり王子に挨拶の礼をする。
 こちらも何度も練習をしてきたので、以前よりは自然に上手にできているはずだ。
 なのになぜか王子の顔はさらに険しく歪んでいる。

 睨んでいるようなその厳しい視線に、マリアの顔からは笑顔が消えていた。


「あ、あの、エドワード様。マリア、どこか変でしょうか?」

「…………」


 エドワード王子は答えない。
 無視されたマリアはもう一度話しかけてみることにした。
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