心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 キョトンとするマリアを横目で見ながら、執事が王子をたしなめる。
 執事だけでなくメイド達からも困ったような目で見つめられ、王子は顔だけ少し動かし後ろにいるマリアを見た。

 目が合った途端、またバッと勢いよくそらされる。



 エドワード様、なんか変。どうしたんだろう?



 マリアがどうしたらいいのか困っていると、王子が視線を合わせないままボソッと小さな声でつぶやいた。


「地味だけど、俺のほうが派手でカッコいいけど、でも、その……お、お前も少しは……か、か、かわ……」

「川??」

「かわ……かわいいぞ!! ほんの少しだけだけどな!!」

「え……」


 王子はそう吐き捨てるように大声で叫ぶと、猛ダッシュで走っていってしまった。
 扉横に立っていた騎士達が無言でサッと扉を開けたので、王子は止まることなくそのまま部屋から出ていく。

 まるで小さな嵐が過ぎ去ったような静まり返った室内で、マリアは呆然と立ち尽くしている。



 今、エドワード様がかわいいって褒めてくれた?
 でもなんでそのまま帰っちゃったんだろう。何しにきたの?



 特にときめいた様子もないポカンとしているマリアを見て、メイド達はエドワード王子の不器用さに頭を痛めていた。
< 413 / 765 >

この作品をシェア

pagetop