心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
キョトンとするマリアを横目で見ながら、執事が王子をたしなめる。
執事だけでなくメイド達からも困ったような目で見つめられ、王子は顔だけ少し動かし後ろにいるマリアを見た。
目が合った途端、またバッと勢いよくそらされる。
エドワード様、なんか変。どうしたんだろう?
マリアがどうしたらいいのか困っていると、王子が視線を合わせないままボソッと小さな声でつぶやいた。
「地味だけど、俺のほうが派手でカッコいいけど、でも、その……お、お前も少しは……か、か、かわ……」
「川??」
「かわ……かわいいぞ!! ほんの少しだけだけどな!!」
「え……」
王子はそう吐き捨てるように大声で叫ぶと、猛ダッシュで走っていってしまった。
扉横に立っていた騎士達が無言でサッと扉を開けたので、王子は止まることなくそのまま部屋から出ていく。
まるで小さな嵐が過ぎ去ったような静まり返った室内で、マリアは呆然と立ち尽くしている。
今、エドワード様がかわいいって褒めてくれた?
でもなんでそのまま帰っちゃったんだろう。何しにきたの?
特にときめいた様子もないポカンとしているマリアを見て、メイド達はエドワード王子の不器用さに頭を痛めていた。