心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
57 聖女セレモニー
「聖女様。そろそろお時間ですので、ご移動をお願いいたします」
「はい」
部屋でゆっくりしていると、突然その時間が訪れた。
聖女セレモニーの始まりである。
不思議とマリアに不安や緊張はなかった。
どのようなものなのか、マリアの頭では到底想像できなかったからかもしれない。
昼間のセレモニーは、貴族ではない国民に聖女の姿をお披露目するのが目的だ。
平民と同じ目線で話したりするのではなく、城の高い位置から国民に手を振ったりなどの挨拶をするだけ……とマリアは聞かされていた。
長く煌びやかな廊下を進むと、その先にある大きな扉の前に陛下と王妃、それから2人の王子が立っているのが見える。
マリアを案内していた執事が、焦った様子で陛下に駆け寄った。