心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「陛下! まだあちらの控室におられるかと……」
「早く国民にマリア嬢を見せたいからな。待てずに来てしまった」
陛下は「はははっ」と明るく笑いながらそう答えた。
本当ならば、陛下達の待っている部屋へマリアが挨拶に伺う予定だったらしい。
それを待てずに陛下達が先に出てきてしまっていては、執事が慌てるのも無理はない。
陛下の視線がマリアに移った瞬間、マリアはドレスの裾を持ち、頭を軽く下げながらこの国特有の令嬢の礼をした。
「おお!! なんと可愛らしい聖女様だ! なぁ、これは国民も皆見惚れてしまうだろうな!」
マリアの姿を見た陛下が、隣にいる王妃に興奮した様子で声をかける。
突然の大声にマリアは驚いたが、王妃も同じくらい興奮しているのか目を輝かせながらマリアを見つめている。