心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「まぁ、本当に! なんて愛らしいのでしょう。こんなに美しい聖女様に、皆夢中になってしまいますわね」
王妃がニコニコと笑いながらそう言うと、王妃の後ろに立っているエドワード王子の顔がムッと怒ったように歪んだ。
その隣に立っている第1王子が、不機嫌になった弟を見てクスッと小さく吹き出す。
見た目だけはエドワード王子にそっくりだが、穏やかそうな雰囲気が全然似ていない。
まだ10歳の第1王子は、マリアと目が合うと柔らかく微笑んだ。
ニコッと微笑み返したマリアを見て、陛下が嬉しそうに話しかけてくる。
「もうとっくに王宮内の広場は人でいっぱいだ。皆、マリア嬢を見たくてたまらないのだ。少し早いが、始めようか」
「はい、陛下」
目の前にある大きな扉が開くと、マリアの視界に真っ先に入ってきたのは青く広がる空だった。
雲一つない澄んだ空のイメージとは裏腹に、何かが爆発したのかと思うほどのドッとした爆音が響き渡る。
それが人々の発した歓喜の声だとマリアが理解するのに、多少の時間がかかった。