心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
よし……! 失敗しないようにしなきゃ……!
マリアは小さく拳を握ると、陛下の隣を目指して一歩一歩進んでいく。
王子2人が少し横にズレて、マリアが立つべき場所を開けてくれている。
王子が立っている時には気づいてなかったが、その場所には背の低いマリアでも顔を出せるように台が置いてあった。
サッと差し出してくれた第1王子の手を支えに、マリアはその台の上に乗った。
手すり壁が邪魔で見えなかった下の景色が、マリアの目に飛び込んでくる。
「わ……あ……」
マリアは思わずポソッと呟いた。
広く丸い広場には、下にある草の色が見えないほど人で埋まっている。
みんなが上を見上げてマリアを見つめているのがわかる。
その圧倒的な光景に目を奪われていて、今日1番の歓声が湧き起こっていることには気づいていなかった。
先ほどから止まない大きな歓声に、耳が慣れてしまっていたのかもしれない。