心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「さあ、時間はまだある。もっと民に笑顔を見せてあげておくれ」
「はい、陛下」
マリアは未だ止まない歓声を聞きながら、こちらを見上げている国民に向かって手を振り続けた。
この場所に来たばかりの時には気がつかなかったが、少し離れた場所にある街にはカラフルなガーランドが飾ってあり、木の板と思われる数々の大きな看板も目に入った。
どれも『聖女様ありがとう』『聖女様大歓迎』の文字がデカデカと書いてあるのだが、遠すぎて文字まではマリアには見えていなかった。
わぁ……! あっちがお祭りをやってるっていう街かな?
行ってみたいなぁ。
そんなことを考えながら、マリアは陛下や皇子達と一緒に笑顔で手を振った。