心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「おいしい……。ありがとう」
マリアがそうお礼を伝えると、部屋にいたメイド達は皆ニコリと微笑んだ。
(ああ……! なんて愛らしい聖女様!! 何杯でも淹れて差し上げたいわ!!)
紅茶や甘いお菓子などで一息ついていると、部屋がノックされ先程案内してくれた執事がやってきた。
手には数枚の紙を抱えていて、どこか興奮しているように見える。
「マリア様! お疲れのところ、申し訳ございません! すぐにご相談したいことが……!」
ゴツ!
余程慌てていたのか、執事はテーブルの角に足をぶつけて無言で蹲った。
プルプルと体が震えているのでかなり痛いのだろう。
痛さが伝わってくるからか、メイド達もハラハラした様子で執事を見つめる。
「だいじょうぶ……?」
そう遠慮がちにマリアが声をかけると、少し恥ずかしそうな顔をした執事はバッと顔を上げて「大丈夫です!」と答えた。
そしてすぐに立ち上がるなり、持っていた紙を見ながら何事もなかったかのように報告を始める。