心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「先ほどマリア様の光を浴びた者達への聴取が終わりました! 小さな怪我をしていた者はその傷が綺麗になくなり、腰痛や頭痛があった者はその痛みが消え、皆体調がとても良くなったとの話でした。そして、皆が着ていた服なども汚れが消えて綺麗になっていたそうです」
「は、はぁ……」
あまりの早口と執事の興奮した様子に、マリアはそんな返事しかできない。
呆気に取られているマリアに気づいていないのか、執事はスピードを緩めずに話を続けた。
「あの光の粒は、まさに聖女様の神秘なる力がこもった素晴らしい物なのです! 大怪我が治ったという話は聞きませんでしたが、小さな傷は完治! 体力回復に身だしなみの清潔を整える──これだけでも十分役に立ちすぎるほどの薬でございます!」
「…………」
「あの光の粒を瓶などに入れて持ち運ぶことが可能であれば、遠くの地域にも聖女様の力を送ることができますし、危険な任務や戦争といった場合にも、兵士の治療に使えます! なんとも素晴らしいあの光の粒を、ぜひ今後──」
マリアとメイド達から呆然とした視線を向けられていると気づいたのか、執事は爆弾のようなお喋りをピタリと止めて、コホンと咳払いをした。