心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「あーー……その、突然捲し立ててしまい、申し訳ございません」
「い、いえ」
「マリア様のお出しになったあの光の粒が、とても素晴らしいというのは……」
「伝わりました」
「左様でございますか」
急に大人しくなった執事は、嬉しいような恥ずかしいような、どこか複雑そうな顔をしている。
メイドの何人かは、肩を震わせて笑いをこらえているようだった。
執事はもう一度コホンと咳払いをすると、片膝をついてマリアと目の高さを合わせた。
「そこで、マリア様にお願いがあるのですが、先ほどの光の粒に関しての研究をさせていただきたいのです」
「けんきゅう?」
「はい。どの保存状況が適しているのか、どれくらい保管期間があるのか、正確にどの程度の治癒効果があるのか……などを、調べさせていただきたいのです」
「マリアは何をすればいいの?」
「また、あの光の粒を出していただけますか?」
キラキラと期待のこもった目でマリアを見つめる執事。実際にその光を見たことのないメイド達からも、ソワソワとした視線を感じる。
マリアはどう答えていいのかわからず、黙ってしまった。
なぜなら、あの光のカケラは初めて出したものであり、どうやって出せたのかをマリア自身わかっていなかったのだから。