心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 エマが王宮に行くことを決意したのは、娘が生まれて1ヶ月が経ってからだった。

 月の見えない日には黄金の瞳の輝きがなくなること、月がまた現れてくると瞳の輝きも戻ってくることが確認できたからである。



 私の娘は聖女様なんだ。
 私は聖女を産んだすごい女なんだ。



 この1ヶ月でエマの精神状態はおかしくなっていた。


「平民の中でも底辺の暮らしをしていた自分が、まさか王宮に入れることになるなんて……。今まで私をバカにしていた奴らも、私の元から逃げたあの男も、みんな後悔するといい……!」


 ずっとそんなことばかり考えていたエマは、夜遅くにフラフラと家を出て王宮に向かった。
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