心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「陛下から許可が下りましたので、マリア様の質問にお答えしたいと思います。何か、お聞きになりたいことはございますか?」
部屋に戻ってくるなり、執事は落ち着いた様子でそう話した。
数人いたメイドは部屋から出され、今この室内にいるのはマリアとエドワード王子と執事の3人だけだ。
向かい合わせで座っているマリアとエドワード王子の横ーーどちらからも顔が見える位置に立った執事は、穏やかな目をマリアに向けている。
「あの……さっきの女の人は、本当にあの人なの?」
「はい。彼女はヴィリアー伯爵……グレイ様のお母上でございます」
「はぁ!? グレイ……って、マリアの兄だろ? ということは、あの女はマリアの……」
「マリア様のお母様ではありません」
「!?」
話に入ってきたエドワード王子からの問いかけを、被さるように否定する執事。
マリアとグレイが本当の兄妹だと思っていた王子は、会話が始まって数秒でもう軽いパニック状態だ。
しかし、そんな王子は放っておいて2人の会話は続く。
「でも、マリアのこと知らないみたいだった。ちがう人みたいで……なんで?」
「……それを説明するには、あの牢の中で何があったのかをお話ししなければいけませんね」
「牢の中で……」