心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
牢という言葉を聞いて、マリアは自分が閉じ込められていた時のことを思い出した。
治癒の力を受けに来た貴族達は、マリアに「こんな狭い牢に入れられて可哀想に」と、薄ら笑いを浮かべながら声をかけてきた。
そうか。今は、イザベラが牢に入れられているのか……と、マリアは不思議な感覚に襲われた。
執事は、一呼吸置いてからマリアとエドワード王子に視線を向ける。
「決して楽しい話ではございませんが、それでもお聞きになりますか?」
マリアは迷わずにコクリと頷く。
エドワード王子は一瞬怯んだものの、すぐに「ああ」と返事をした。
「マリア様を……聖女様を監禁して虐待していたイザベラ婦人の行為は、簡単に許されることではありません。様々な情報を聞き出した後、彼女に求められた罰にはもちろん『処刑』という案も出たくらいです」
監禁、虐待、という言葉が出て、エドワード王子が息を飲んだのがわかった。
信じられないといった目で執事からマリアに視線を移すが、マリアは動揺した様子もなくジッと執事を見つめたままだ。
執事はギョッとしている王子に気づいているものの、話を続ける。