心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 聖女が生まれたと周りに知られたら、誘拐されてしまうかもしれない……と疑心暗鬼になっていたエマは、娘を誰にも会わせていなかった。



 昼間に出かけるのも危険だ。
 夜、人がいなくなったら出かけよう。



 そう考えた結果、夜遅くに王宮に向かうといった暴挙に出てしまったのである。

 こんな時間に突然訪ねてきた得体の知れない平民女を、王宮が受け入れるわけがなかった。

『聖女』という単語を出せば通してもらえた可能性はあるが、疑心暗鬼の塊となっていたエマはその言葉を出せなかったのである。



 こんな門番をしているような奴に知られたら、聖女を奪われるかもしれない……!
 


 それがエマの考えであった。王宮に入れなかったエマは、その日は諦めようと家に帰ることにした。
 
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