心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 じゃあ、今は叩かれたりご飯抜きにされてないってこと?



 マリアは内心ホッとしていた。
 自分がされていたこととはいえ、人にしてると聞かされても喜べない。

 執事は、そんなマリアの内情に気づいているのか、先ほどまでの怒りの色を全て消した。
 穏やかな表情でマリアを見つめる。


「……とはいえ、このままずっと彼女を王宮の牢に入れておくわけにはいきません。マリア様が望めば可能ではありますが」



 私が望めば……?



「イザベラ婦人をどうしたいですか? マリア様」


 マリアは瞳をパチパチと瞬かせると、向かい合わせに座っているエドワード王子に視線を向けた。

 王子は、まるで『俺に聞かれても困る!』とでも言いたげに眉をくねらせると、黙ったままマリアを見つめ返す。



 あの人をどうしたいか……?



「あの人は……お兄様のお母様だから……マリアじゃなくて、お兄様に聞きたい……」

「……マリア様自身は、どうしたいという希望はないのですか?」

「マリアは……」

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