心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 2人のキョトンとした様子に、エドワード王子は眉と口元をひくひくと動かした。その顔には冷や汗が浮かんでいる。


「え……? いや、だって……じゃあまさか、残飯を出されたり、食事を3日与えられなかったことも?」


 マリアはコクリと頷く。


「じゃ、じゃあ……鞭で打たれたりも……?」


 マリアが首をフルフルと横に振ったので、王子はホッと胸を撫で下ろした。
 しかし、続くマリアの言葉にまた顔を強ばらせる。


「鞭で打たれたことはないよ。いつも手で叩いてくるだけだったから。……あっ、あとは引っ掻かれたりとか……」

「…………」


 エドワード王子が顔を青くして固まってしまう。

 言わない方がよかったのかな? と、マリアはチラリと執事に視線を向けたが、執事は眉を少し下げつつも笑顔を作った。

 
「あの、エドワード様?」

「……なんで……」

「え?」

「なんでそれでいいんだよ」


 エドワード王子が少し顔をうつむかせたと思ったら、なにやら普段より低く小さい声が聞こえてきた。
 ボソボソと呟くように言っていたため、目の前に座るマリアにもよく聞き取れない。


「ごめんなさい。よく聞こえな……」

「なんでお前はそれでいいんだよ!!」

「!?」


 突然顔をバッと上げるなり、王子は大きな声で叫んだ。
 あまりの勢いに、マリアはビクッと身体を震わせる。
 
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