心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「お兄様の決めた通りにする、だって!? マリアはそんなに酷いことをされたっていうのに、仕返ししたくないのかよ!?」

「仕返し?」

「酷いことされたんだから、悔しいだろ!? やり返したいと思うだろ!?」

「でも、もう同じことをしたって……」

「それだけでいいのかよ!!」


 気づけばエドワード王子は立ち上がっていて、身を乗り出すようにして熱弁している。
 まるで自分が何か不快なことをされたみたいに、本気で怒っているみたいだ。

 自分と同じように怒り出さないマリアを見て、王子は諦めたらしい。
 急に執事をギロッと睨みつけると、歩き出すと同時に言った。


「あの女を処刑しよう。なんでまだ生かしてるんだ」

「ええっ!?」


 黙ったままの執事と、焦り出すマリア。


「ダメだよっ! あの人は、お兄様のお母様なんだし!」

「そんなの関係な──」


 そこまで言って、ハッとしたエドワード王子の言葉と足が止まる。
 吊り上がっていた眉が戻り、その顔からは怒りの感情が抜けて呆然としているようだ。

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