心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアの瞳が文字通りキラキラと輝き出したのを見て、王子はハッとした。
今、自分は何か余計なことを言ってしまったのではないか……と。
マリアとお兄様は結婚できるの……?
ここ最近の落ち込んでいた理由が、一気に解消してしまった。
まだ本当に結婚すると決まったわけではないのに、『できる』という事実だけでマリアは十分幸せな気持ちになれた。
反対に、エドワード王子の顔色が青くなっていることには気づいていない。
「マッ、マリア様! お、黄金の光が……!」
「えっ?」
執事の興奮した声にハッとすると、セレモニーの時と同じように黄金の光がマリアを包んでいた。
それに気づいた時にはもう、その光はパアッとマリアから離れて部屋中に飛び散る。
どこにそんなに隠し持っていたのか、執事は懐から取り出したいくつもの小瓶に光のカケラを一つずつ入れ始めた。
そのあまりの早技に驚きながらも、マリアもテーブルに置かれた小瓶に手を伸ばしその作業を手伝う。
ゆっくりと落ちてくる光のカケラを小瓶に入れていく作業は、想像以上に楽しかった。
「すみません、マリア様! 手伝わせてしまって」
「ううん。楽しい」
ニコニコと光のカケラを集めている2人を、エドワード王子が呆然としながら見つめていた。