心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「なんか……みんなグレイを見てない?」
「…………」
チラチラと感じる視線。
女性だけでなく、貴族家当主と思わしき人物からも遠慮なく向けられる視線に、グレイはげんなりしていた。
ガイルの言っていた通りだったな。
そんな聖女を発見し保護している人物として、グレイの名前も自然と広まっていたのだ。
まだ13歳の伯爵家当主。
あのセントオーストル学園を、13歳という若さで高等部卒業の資格を取った優秀な人物。
そして、初めて見た者に思わず甘美なため息をつかせてしまうほどの、美しく整った顔立ち。
聖女と同じくらい、グレイも一瞬で有名になってしまった。
「まさか本当に、それだけのことでこんなに注目されるとはな。鬱陶しい」
グレイは心底嫌そうに顔を歪めると、スタスタと早歩きで会場に入っていく。
「あっ、待ってよ! グレ……」
「レオ!!」
レオがグレイに続いて会場に入った瞬間、大きな声で呼び止められた。
レオだけでなく、グレイも声を出した令嬢を振り返る。
グレイやレオと同じ年齢くらいの、ピンクの髪が印象的な令嬢。
リボンやフリルがたくさん付いた愛らしいドレスに身を包んだ、とっても可愛い娘だ。