心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
さらに眉を顰めたグレイに、ベティーナが声を抑えながら返事をした。
手がプルプルと震えている。
「ま……まぁいやですわ。グレイ様ったら。私、クラスメイトだったベティーナ・アルダンテですわ」
「そうか。覚えてないな」
「なっ……!」
「グッ、グレイ!!」
ベティーナの顔が真っ赤になると同時に、レオが慌ててグレイに駆け寄る。
そしてベティーナに背を向けるように身体の向きを変え、周りには聞こえないくらいの小声でグレイを咎めた。
「ダメだよ! グレイはもう伯爵家当主なんだし、こんな公衆の面前で令嬢に失礼な態度したらまずいって!」
「失礼な態度? 俺がいつ? ちゃんと会話していただろ」
「その会話の内容がダメなんだって!」
レオが焦っているのは伝わってくるが、何がダメだったのかグレイには理解できない。
頭の中に『グレイ様は女性のお気持ちがわからないから……』と言っているガイルの顔が浮かんで、グレイは顔をしかめた。