心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「このような場ではなかなか会えませんが、私は個人的にグレイ様にお会いしたいと思っていますの。まずは、このパーティーで私のエスコートをしてくださいませんか?」
ピンク色の髪がふわっと揺れて、大きな瞳がパチパチと瞬きをしている。
その愛らしい姿に、周りにいた男性達が頬を赤くして彼女を見つめた。
どうやら男性に人気ある令嬢のようだ。
そして、それを彼女自身もよくわかっている。
断られるなどと微塵も思っていないような真っ直ぐな瞳に、グレイはキッパリと言い放った。
「無理だ」
「え……?」
「グレイッ! 言い方っ!」
無理なものは無理。
それ以外にどう言えばいいというのか。
はっきりと断られたベティーナは、唇をプルプルと震わせながら絞り出すように声を上げた。
「な、なぜですの? 見たところ、グレイ様にもパートナーはいらっしゃらないようですが……」
「俺のパートナーは妹のマリアだ」
「聖女様がパートナー? で、でも、聖女様はエドワード殿下の婚約者だと聞き……。……っ!?」
途中まで言って、ベティーナは口をつぐんだ。
グレイの氷のように冷め切った瞳と目が合い、その恐ろしさに硬直してしまったのだ。