心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
63 グレイに婚約者はいりません?
ベティーナから離れたグレイとレオは、軽食が置いてあるテーブル付近の壁に寄り添って立つことにした。
コルセットで苦しいからなのか、こういった場で食事をするのを恥ずかしいと感じているからなのか、軽食のあるテーブル付近には女性がほとんどいない。
男性しかいない空間に、グレイとレオはホッと一息ついた。
「やっと落ち着けたね!」
「ずっと見られてはいるけどな」
令嬢達は、今も離れた場所からジーーッと熱視線を送ってきている。
しかし、誰もグレイに声をかけてはこないし近寄ってもこない。
美少女であるベティーナが、あれほどにもあっさりと振られたのだ。
その光景を見ては、我こそはと名乗り出れるほど勇敢な令嬢はいないだろう。
「はぁ……。なんだってこんなにジロジロ見られないといけないんだ? そんなに聖女の兄がめずらしいのか?」
「うーーん。めずらしいか、めずらしくないかで言ったら確実にめずらしいんだけど、グレイがジロジロ見られてる原因はそれだけじゃないっていうか」
「なら、なんだ?」
「ほら。グレイは若いのにもう伯爵家当主だし、顔だって良いだろ? だから、そのーーみんなベティーナと同じで……」
「……婚約者の座を狙ってる、と?」
レオがコクンと頷くのを見て、グレイは心底うんざりした。
きっと顔にも出ているだろう。