心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアと結婚について話した時、その時がくれば誰かに紹介された令嬢と結婚することになるだろう、と答えた。
その時は本当にそう思っていたから。
しかし、実際にそんな場面になったらどうだ。
これほどにも拒否感が出るとは、グレイは思っていなかった。
若い令嬢達から向けられるギラギラとした視線も、やけに甘えたように見せる仕草も、どれもこれもが鬱陶しい。
いつかはそんな令嬢の1人と結婚し生涯を共に過ごすと考えるだけで、グレイの腕には鳥肌が立っていた。
「レオ。……俺は婚約者は作らない」
「え? でも、グレイは伯爵家当主なんだし、いつかは作らなきゃ……」
「それはお前に譲る」
「意味わかんないんだけど!?」
レオは「まったく〜」と言いながら、軽食を数種類皿に乗せて食べ始めた。
見ていたら食べたくなってしまったらしい。
「グレイもいる?」と聞かれたが断った。
「でもさ〜、そんなに他の令嬢と婚約したくないなら、マリアを婚約者にすればいいんじゃない?」
頬袋を膨らませてモグモグ食べながら、レオは周囲を見渡して小さな声で提案してくる。