心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 今のマリアを婚約者に……と考えるのは無理だな。



 それに、本人の意思を無視して勝手に決めたくはない。
 グレイはそう判断し、それ以上考えるのを止めた。


「あっ、見てグレイ! あの扉の前に、騎士達が集まってきてる! もうすぐマリアが登場するんじゃない?」


 周りもそのことに気づいたのか、ソワソワとした空気が流れてくる。
 皆、貴族なのであまり顔や態度には出さないようにしているが、チラチラと扉に視線を向けているのはバレバレだ。

 伝説の聖女を初めて見るのだから、無理もないだろう。

 しばらくすると、国王と王妃、2人の王子が入来した。
 全員が頭を下げて、国王からの許しが出るまで待つ。
 玉座に座った王は、顔を上げるように命じてから先程の扉に視線を向けた。

 王妃や王子達、そして会場にいる貴族達も、皆が少し高い位置にある扉に注目する。

 全員が扉に集中していて誰も話している者がいないからか、会場内はこれだけの人数がいるにも関わらず、しんと静まり返っていた。

 
「聖女、マリア様御入来!」

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