心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 ギィ……と扉が開き、その先にマリアが立っているのが見える。

 純白ドレスを身にまとい、遠目でも黄金の瞳とプラチナブロンドの髪がキラキラと輝いているのがわかった。
 まるで美しい人形が立っているようだ……とグレイは思った。

 周りの貴族達が、マリアの姿を見て息を呑んでいる。
 黙っていても、その恍惚とした表情を見れば、皆がマリアの美しさに言葉を失っているのが伝わってくる。



 家で見るのとこういった場所で見るとではまた全然違うな。



 そこにいたのは、『マリア』ではなく『聖女』だった。
 マリアがどこか遠い存在に感じてしまう。

 そんな時、これだけの人混みの中でグレイはマリアと目が合ったような気がした。

 会場の端にいる自分に気づくはずはない。
 そう思うのだが、マリアが一瞬ニコッと微笑んだ気がして、グレイは無意識に心を躍らせた。

 あの伝説の聖女が、俺に微笑んでくれた……と。




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