心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「……そうだな」


 その反応に驚いたのか、レオが目を丸くしてグレイを凝視した。


「え!? グレイも寂しいって感じたの!? グレイが!?」

「どういう意味だ? 俺がそう感じたらいけないのか?」

「だだだだって、今までグレイは寂しいなんて思ったことないじゃん! 俺が帰る時も、全然寂しがってくれないし!」

「なんでお前が帰るのを寂しがらなきゃいけないんだ。嬉しいだけだろ」

「ほらぁ!!」


 驚いた顔から一転、レオはプリプリと怒っている。
 こんなに騒がしいレオが帰るとなったら、やっと静かになるなという感想しか出てこない。


 でも、言われてみれば最近は寂しいなんて感じたことはないな。
 幼い頃には感じた記憶が──。


 グレイの頭の中に、父であるジュード卿がマリアとマリアの母を連れて来た日の光景が浮かんだ。

 あの日を境に、父と母が自分から離れ、家族というものが崩壊した。
 当時まだ6歳だったグレイには、当初寂しいという感情があったはず……。


 その頃の記憶を思い出そうとして、グレイは途中で考えるのをやめた。

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