心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「そ、それに、マリアはまだ小さいから普通のダンスとは違うんだろ? グレイ、本当に大丈夫なの?」


 レオの言う通り、まだ背の低いマリアに普通のダンスを踊ることはできない。

 しかし、この国にはまだ幼い姫が踊れるようにと作られた特別なダンスがあった。
 今は王子しかいないため、そのダンスを踊れる者はほとんどいない。
 グレイももちろん知らなかった。


「……はぁ。大丈夫だ。ガイルに徹底的に叩き込まれたからな」


 グレイは練習の時を思い出し、心底不快そうなため息をつきながら答えた。
 レオがギョッとしている。


「え!? ガイルは踊れるの!?」

「どこで覚えたのか知らないけどな。さすが長く生きてるだけある……おい。何笑ってるんだ」


 レオが顔を下に向け、肩をプルプルと震わせている。
 隠しているつもりなのかもしれないが、全く隠れていない。
 グレイは正直にレオに話したことを後悔した。


「グ……グレイが……くっ、ガイルと……ダンスの練習を……くくっ」

「そうだ。だから何も問題はない。それよりも、お前に相手がいるかのほうが心配になってきたぞ。さっきのベティーナとかいう令嬢に、頼んできてやろうか?」

「ごっ、ごめんって! それだけはやめてっ!」


 一瞬で笑いが吹き飛んだのか、レオはかなり焦った様子で顔を上げた。

 腕を組んだグレイがフンと鼻を鳴らしレオから視線を外すと、すぐ近くにいる貴族達……いや、会場中の人々がグレイを見ていることに気づいた。



 なんだ!?


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