心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「抱いている赤ん坊の瞳が黄金色に輝いていたのを」
「!!!」
エマは慌ててその場に立ち上がった。
無意識に赤ん坊をくるんでいる布をさらに巻きつけ、顔を見えないように隠す。
すぐにこの場から逃げようと企むが、それが簡単ではないことに気づく。
馬車の奥に座ってしまっていたため、エマが外に出るにはジュード卿の前を通らなければならないからだ。
聖女だってバレた……!!
この男の目的は聖女だ! 絶対に渡すもんか!
エマの脳内がパニックになっていた時、ジュード卿は立ち上がっているエマを余裕な顔で見つめていた。
貼り付けたような笑顔は恐怖こそ与えないが、安心感を与えることもない。