心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「俺はダンスを踊れるぞ? 普段から練習している。お前も知ってるだろう? 何を言っているんだ」
「いえ。その、エドワード殿下が日々練習されているダンスとは、違うのです。そちらは成人された時に向けてのダンスでして、今マリア様が踊っているダンスとは違うのです」
「はぁっ!?」
驚愕の表情をしているエドワード王子を見て、隣に座っている第1王子が吹き出しそうになっていた。
少しアホな弟がかわいいのか、第1王子は緩む口元を我慢しながら生温かい目で弟を見ている。
「なんでそれを教えてくれなかったんだ!?」
ガタン! と勢いよく立ち上がったエドワード王子に驚き、近くにいた貴族達から一気に視線が集まる。
王子はそれに気づくと、慌てて腰を下ろした。
マリアと踊るという、今日1番楽しみにしていた予定が崩れ、王子の頭の中は真っ白だ。
「まぁまぁ。聖女様とは、まだこれからも踊れるチャンスはあるさ。諦めずに、がんばれ!」
弟を優しく、そしてどこか楽しそうに慰める第1王子。
執事は第1王子に放心状態のエドワード王子を任せることにし、一歩後ろに下がった。