心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「エドワード殿下! どうしてこちらへ! まだ危険ですので、先程のお部屋から出ないようにとあれほど……!」
「お前がマリアを連れてくるって言ってたのに全然来ないから、しんぱ……じゃなくて、えっと、道に迷ってるのかと思って来てやったんだ!」
エドワード王子が、『心配』と言いかけていたのを必死に隠そうとしている。
素直じゃないけれど、マリアへの気持ちが隠しきれていない幼い王子。
そんな可愛らしい王子の姿を見ても、グレイはしかめ面のままだ。
エドワード王子は、グレイに抱えられているマリアをジロッと睨んだ。
「いつまでその状態でいるつもりだ? もう7歳なんだし、早く下ろしてもらえ!」
「……お兄様」
「まだ危険なことには変わりないし、しばらくはこのままでいい」
王子に叱咤されたマリアがグレイに問いかけたが、グレイはそれを一蹴した。
エドワード王子の顔がわかりやすく不機嫌になったのを、レオはハラハラしながら見守っている。
執事は疲れたように「はぁ……」とため息をついていた。