心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「この状態では、聖女セレモニーを続けるのは困難だろう? この混乱に乗じてマリアに危険が及ぶかもしれないし、今日はここで帰った方が安全だと思うんだが……」


 グレイの提案に、執事がうーーんと悩みだす。
 こんな終わり方にしてしまっていいのかという考えと、グレイの言っていることも一理あると思っての悩みだろう。


「……そうですね。少しお待ちいただけますか。陛下に確認して参ります」

「頼んだ」


 執事が走り去っていく。
 気づけば、グレイ達の周りには護衛騎士が数人立っていた。
 何人かは会場内の混乱を抑えようと奮闘していたらしく、息が荒くなっている者もいた。



 会場から聞こえてくる声や物音で大体は想像できるが、思ってる以上に中は酷い状態みたいだな。



 グレイは、ずっと自分を睨み続けている王子に声をかけた。


「エドワード殿下もここにいたら危険なので、早く戻った方がよろしいかと。騎士の方、どなたか殿下と一緒に……」

「俺はまだここにいる! 血が繋がっていないからといって、調子に乗るなよ!」



 は?



 グレイは思わず、王子に向かってそう言ってしまいそうになった。

 意味がわからなかったからだ。
 今この場面で、マリアと血の繋がりがないことがなんだというのか。

 そして、聖女と血が繋がっていることを誇るのならまだわかるが、血が繋がっていないことで調子に乗るなとは一体どういうことなのか。

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