心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「申し訳ありませんが、仰っている意味が……」
「血が繋がってなくても、お前はマリアの兄なんだからな!!」
「…………」
この王子は何を言っているんだ?
グレイはイライラする感情をなんとか抑え、斜め後ろに立ってるレオをギロッと睨みつけた。
完全なる八つ当たりである。
レオは口をパクパクさせながら、声には出さずに(俺を睨むなよっ!)と文句を言ったが、グレイには届いていない。
マリアはグレイとエドワード王子の不機嫌さの理由がわからず、戸惑っていた。
しかし、レオが声を出さずに見守っている様子を見て、自分も何も言わないと決めたのだった。
しばらく無言の時間が過ぎていき、レオが気まずい空気に耐えられなくなった頃、執事が急ぎ足で戻ってきた。
「お待たせして申し訳ございません!」
執事は、なんでまだここにいるんですか! という目をエドワード王子に向けた後、グレイとマリアに近づいていく。
「陛下は今、他国の貴賓の方々と一緒におられます。あの騒ぎの中には他国の王子も数人混ざっているようでして、そちらも今バタバタとしております……」
この数分で一気に老けた執事の顔を見れば、どれだけ混乱の最中なのかは容易に想像できる。
しかし、グレイにとってはそんな話はどうでもよかった。