心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「落ち着いてください。私はその子を貴女から奪ったりなどしません」
「う……嘘よ!」
「本当ですよ。ただ、何か力になれればと思っただけです。貴女は王宮の方向から歩いてきましたね? でも、中に入れてもらえなかったのではないですか?」
「!!」
何も言っていないというのに、そんなことまでわかってしまうのか、とエマは感心してしまった。
そして、同時に王宮に入れなかった事実を思い出す。
確かに私は門前払いをされてしまった。
このまま王宮の中に入れないなら、聖女がいても意味がない……。
それなら、この男の話を聞いてみてもいいかもしれない。
エマはジュード卿を見つめたまま、もう一度椅子にゆっくりと腰掛ける。
その様子を見ていたジュード卿は、ニヤリと口角を少し上げた。