心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 コンコンコン 

 すぐ隣にあるグレイの部屋の扉を、ガイルがノックする。
 すると、すぐにグレイの声が聞こえた。起きているというのは本当だったようだ。


「なんだ?」


 マリアの心臓がドキッと反応する。
 無意識に持ってきていた枕を、またギュッと抱きしめる。


「グレイ様。マリア様がいらしております」

「……は?」

「失礼いたします」


 まだグレイの了承を得ていないのに、ガイルは勝手に扉を開けた。
 先ほどの驚きの返事が、了承の合図だったのかとマリアは首を傾げた。



 ……いいのかな?



 堂々としているガイルに続き部屋に入ると、ベッドの上で座っているグレイが目に入った。
 分厚い本を持っているので、寝る前に読書をしていたのだろう。

 
「マリア? こんな時間にどうした?」


 グレイは本を閉じてサイドテーブルに置き、大きな枕に寄りかかっていた身体を少しだけ起こす。

 マリアの前に立っていたはずのガイルは、気づけば部屋からいなくなっていた。
 開けたままだった扉が閉まっているので、いつの間にか出てしまったらしい。

 扉を確認した後、マリアはおずおずとグレイを見た。
 
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