心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「あの、ごめんなさい。マリア……眠れなくて……」

「眠れない? 疲れてないのか?」

「……こわくて」


 ギュウウッと枕を抱きしめる力を強める。
 少し俯いた瞬間に、グレイはベッドから下りていたみたいだ。
 今はマリアの前に片膝をついて座っている。

 突然枕の先にグレイの顔が見えて、マリアはビクッと身体を震わせた。


「怖いって、何が怖いんだ?」

「……檻にいたころを思い出して、あの、その時は平気だったんだけど、人が……急に暴れたり、大きな声出したり……」


 自分が何に対して恐怖を感じているのか、言葉にするのが難しい。
 うまく説明できないもどかしさに、マリアの目には薄っすらと涙が浮かんできた。

 ふわっ


「!!」


 不意に、グレイに抱き上げられる。
 間近にあるグレイの碧い瞳は、真っ直ぐにマリアを見つめている。

 怒っている様子もないが、笑顔でもない。
 感情のわからないグレイの冷たい表情は、不思議とマリアには怖くなかった。


「どうしたら怖くなくなる?」

「……い、一緒に寝たい……」

「!」

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