心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 勇気を振り絞って伝えると、グレイの目が少し大きく見開く。
 マリアの返答が予想外だったらしい。


「だ、だめだよね……」

「……別にダメなんて言ってないだろ」

「……いいの?」

「ああ。しっかり枕も持ってきてるみたいだしな」


 そう言うなり、グレイはマリアを抱えたままベッドに向かう。
 優しくベッドに下ろしてもらい、マリアは自分の枕をグレイの枕の横に置いた。


「えへ」

「……そんなに嬉しいのか?」


 ふっと柔らかくグレイが笑う。
 普段ずっと真顔でいるグレイ。
 その彼の滅多に見せない優しい笑顔に、マリアは顔が熱くなるのを感じた。


「マリア、誰かと一緒に寝るのはじめて……」


 赤ん坊の頃は、もしかしたら母であるエマと一緒に寝たことがあるのかもしれない。
 しかし、マリアの記憶の中ではマリアはいつも1人だった。
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