心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアの言葉を聞いて、グレイもまた真顔に戻る。
「怖くなったら、またここに来ていい」
「……ほんと?」
「ああ。俺が寝るまでは、部屋は明るいままだがな」
「マリア、明るいほうが好き」
枕にポスッと頭をのせると、グレイが首まで毛布をかけてくれる。
まだ寝ないのか、グレイは隣に座ると立て掛けた枕に寄りかかった。
また本を読むのかな?
そう思ったが、グレイはサイドテーブルに置いた本に手を伸ばすことなく、ただマリアを見つめているだけだ。
ドキドキと、鼓動が速くなって落ち着かない。
それなのに全く嫌じゃない。
まだすぐには眠れそうにないマリアは、あのことをグレイに話そうと口を開いた。
「あのね、今日イザベラ様に会ったの」
「……は?」
一緒に寝たいと言った時以上に、グレイが驚いているのがわかる。
頭がすぐに理解できていないのか、少し硬直した後にグレイが大きな声を出した。
「どこで!? 誰がマリアをそこに連れて行った!? 何かされたか!? 何か言われたか!?」
こんなにも慌てているグレイを初めて見る。
マリアは横になっていた身体を起こし、最初から全部グレイに説明した。