心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 馬車に乗って帰宅途中だったジュード卿は、たまたま窓の外に顔を向けていた。
 
 歩行者などほぼいない夜遅い時間だというのに、若い女が1人で歩いている。
 みすぼらしい姿をした女がこんな時間に何をしているのかと、通り過ぎ様に視線を向けたジュード卿は、一瞬自身の目を疑った。

 女が抱いているモノに、2つの輝く黄金の宝石がついている。
 暗闇の中でもハッキリわかるほどの美しい宝石だ。


「止まれ!!」


 咄嗟にジュード卿は叫んでいた。
 宝石が珍しかったからではない。宝石であると思ったモノが、赤ん坊であると脳が認識したからである。

 黄金の瞳を持つ赤ん坊だと認識した時、すでにジュード卿の頭の中には『聖女』という言葉が浮かんでいた。
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