心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「今回の浄化は長かったな」

「この小さい国の中でも最北端でしたからね。ですが、あの廃れた土地がマリア様のおかげで作物を作れる土地に生まれ変わったみたいですよ」

「そうか」

「この10年……マリア様が国中を回ってくださったおかげで、この国はだいぶ豊かな国へと発展いたしました。今後は大きな自然災害などない限り、マリア様が遠くまで行く必要はなくなるでしょう」


 コク……と用意されていたお茶を一口飲みながら、グレイはガイルの言葉を反芻させていた。



 今まではマリアが長く家を空けることも多かったが、一通りそれが終わったとなると、やっとマリアも落ち着くことができるのか。
 10年……長かったが、マリアもよくがんばったな。



「今夜はマリアの好物をたくさん用意してやってくれ」

「数日前から、料理長が張りきっております。テーブルに全部並べられるのか心配なくらいですよ」


 昨日、大量の食料が運ばれたと聞いたが、そういうことかとグレイは納得した。
 ここ数日、庭師が手入れを頑張っているのも、メイド達が掃除を頑張っているのも、屋敷内がやけに華やかに飾られているのも、全てマリアを出迎える準備だったのか、と。

 そんなことを考えながら机に置いてある報告書に手を伸ばしたグレイは、表紙の文字を見て顔を歪めた。

『イザベラ様監視報告書』

 
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