心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ガイルの見透かすような目に見られていると、責め続けることができない。
頭の上がらない祖父と対面しているような、居心地の悪さを感じてしまうのだった。
「グレイ様」
「……なんだ?」
「どうやら予定よりも早く到着されたようです」
「は?」
そう言うなり、ガイルがスッと壁際に移動している。
何事かと思っていると、目の前にある扉からノックの音が聞こえた。
コンコンコン
……早く到着? まさか。
「お兄様。マリアです」
「……入れ」
想像通りの人物の声に、グレイの胸が少しだけ高ぶる。
カチャ……と丁寧に開けられる扉から、目が離せない。
「ただいま戻りました」
廊下の窓から差し込む光で、眩しいくらいに輝くプラチナブロンドの髪。真っ白な肌に、丸く大きな黄金の瞳。
細く長い手足で綺麗に令嬢の礼をしたマリアは、顔を上げてニコッと笑った。
「マリア……」
17歳に成長した美しいマリアは、グレイを見て心から嬉しそうに微笑んでいる。
そんなマリアを見て、グレイは一瞬時が止まったかのような錯覚に襲われた。