心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
先ほどまでの無表情とは違い、優しい笑みを浮かべたガイルがマリアに話しかける。
「お帰りなさいませ。マリア様」
「ただいま、ガイル」
「また身長が伸びましたね」
「そうなの。このお洋服も、いつの間にかスカートがこんなに短くなっちゃって……」
マリアはスカートの裾を掴み、クルクルと軽く回ってみせた。
綺麗な髪がなびいて、まるでダンスを踊っているかのようだ。
出発前は膝下だったはずの丈が、今では膝が少し見えてしまっていた。
この3ヶ月でどれほど身長が伸びたのかがよくわかる。
「そのうち、ガイルの背に追いつくかも」
「それは嬉しいですね」
ふふふっと笑い合っているマリアとガイル。
実は、マリアの成長期がきたのは17歳になってからだった。
16歳の頃は、どう見ても12歳くらいにしか見えないとグレイは思っていた。
ずっと小さくて、いつまでも子どものようだったマリア。
17歳になったマリアは突然背が伸び始め、身体も顔も一気に大人びていった。
子どもから大人の一歩手前まで一瞬で成長してしまったマリアに、グレイは未だ慣れずにいる。
この会っていなかった3ヶ月の間にも、さらに大人っぽくなっていたみたいだ。
マリアと再会したグレイは、まだまともに喋れていない。
まるで知らない女性と対面しているような気分であった。