心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 先ほどまでの無表情とは違い、優しい笑みを浮かべたガイルがマリアに話しかける。


「お帰りなさいませ。マリア様」

「ただいま、ガイル」

「また身長が伸びましたね」

「そうなの。このお洋服も、いつの間にかスカートがこんなに短くなっちゃって……」


 マリアはスカートの裾を掴み、クルクルと軽く回ってみせた。
 綺麗な髪がなびいて、まるでダンスを踊っているかのようだ。

 出発前は膝下だったはずの丈が、今では膝が少し見えてしまっていた。
 この3ヶ月でどれほど身長が伸びたのかがよくわかる。


「そのうち、ガイルの背に追いつくかも」

「それは嬉しいですね」


 ふふふっと笑い合っているマリアとガイル。
 実は、マリアの成長期がきたのは17歳になってからだった。

 16歳の頃は、どう見ても12歳くらいにしか見えないとグレイは思っていた。
 ずっと小さくて、いつまでも子どものようだったマリア。

 17歳になったマリアは突然背が伸び始め、身体も顔も一気に大人びていった。

 子どもから大人の一歩手前まで一瞬で成長してしまったマリアに、グレイは未だ慣れずにいる。
 この会っていなかった3ヶ月の間にも、さらに大人っぽくなっていたみたいだ。

 マリアと再会したグレイは、まだまともに喋れていない。
 まるで知らない女性と対面しているような気分であった。

< 494 / 765 >

この作品をシェア

pagetop